庭で遊ばせる時は鎖につながないことにしていた。
今日は妹に食料品のスーパーに連れて行ってもらったのだが、その際も繋がないまま出かけた。
戻った時も大人しく柵の中にいた。
僕が食料品の整理をしようとした時、さっきまで甘え泣きしていた声が消えた。
勝手口の戸を開けて庭を覗くとBlakeの姿がない。
妹が家に戻る前に散歩に連れて行ってくれたのかと思ったら大通りの横断歩道あたりから大声で叫ぶ声が聞こえてきた。
「Blake!Blake!」
「兄ちゃん、Blakeが逃げちゃったよ!轢かれちゃうヨ!」
慌てて駆けつけると彼は通りを渡っている。今日は日曜で交通量が多い。
Blakeは横断歩道をやっと渡った妹に取り押さえられた。というより車二台に挟まれて立ち往生してしまったところを妹に捕まえられた、というのが正しい。
どうも一昨日、昨日、今朝、と、三日続きで散歩に連れ出してくれた妹になついてしまい、彼女と夕方の散歩がしたかったようなのだな。彼女に捕まった時、抵抗する気配もないのだから。
本人に悪気はないので何も無かったかのような顔で妹の腕に抱かれて帰ってきたが、途中で僕が抱き手を代わると急にショボンとして叱られると思ったのかみずから柵の中に入った。
その後は身を擦り寄せて甘え続ける。
心を鬼にして頭の一つも叩こうと思ったが、まあ、そんなことは僕にはできないのだな。
ただ、彼の寂しさは判っているけど、結果として彼は鎖に繋がれることをみずから選択したことになる。
こういう愛犬家の風上にも置けぬ(と思われる)放任主義の結果がどうなるのか判らないけど、彼と一緒にひとつずつハードルをクリアして、お互いにとって暮らしやすい形を模索して行くしかないのだろう。
手間はかかるけど、それでも仕方ないと思っている。
ちなみに一昨日はTsubuさんの仲立ちでコラアケゲン君が定期的にライヴ活動できそうな小屋を交渉しに出かけていた。
昨日は逗子まで海に沈む夕日を見に出かけた。
元・『スポーツニッポン』文化部長で、敬愛する音楽評論家・小西良太郎さんが逗子に引っ越されて、かつてのスポニチの書き手たちに「一度夕焼けを見に来い」と声がかかっていた。
僕は小西さんと過ごす時間がとても好きだ。
嵐山・逗子およそ3時間。でも、何時間かけても会いに行きたい人なのだ。
その独特の語り口が好きだ。
若かったあの頃に素直に戻ってゆける気がする。
ひばりさんや阿久さん、なかにしさんや星野さん、船村さんなどなどなど音楽界の超大物たちに今も昔も大切にされているこの評論家は、今や中途半端な物書きとして一生を終えそうな僕らかつてのスポニチの書き手をこよなく愛してくださる。
ここまで物書きとして生き延びたんだから大したモンだと自分を褒めてやりゃあイイじゃあねえか。
そう言って折角戴いたチャンスを上手にモノにできなかった僕らをかばってくれる。
小西さんの新しいお住まいから眺める逗子の夕焼けはバラ色で、レドンドの怒ったように真っ赤な日暮れより何倍か美しかった。
Blakeは今、自分の小屋に戻った。
2 件のコメント:
横断歩道で車に挟まれ立ち往生・・なんて、読んでてヒヤッとしてしまいました。
でも無事で良かったですね!
かつて、うちで面倒見てたことのある半ノラ猫たちは何匹も轢かれてしまいました。今も、道路を渡る猫を見るとハラハラします。
かぜさんの妹さんは確か私と同い年だと伺ったことがありました。かぜさんのことを「兄ちゃん」と呼ぶのですね。何かすごーくうらやましいです~(笑)。
専門的なことはわからないけど、
Blake君との関わり方は、かぜさん流でいいのではないかと思います。本人(犬)同士にしかわからない、通じ合うなにかがあると思うから。
医学的なことはわかってないと命に関わるけど、あとはいぬの気持ちと人の気持ちにおりあいをつけながら(むずかしそうだけど)、
ほんとに「模索」ですよね。
私もそうして知らず知らずのうちに猫好き(?)になりました。
かぜさんはもっとずっと大丈夫だと思います。
きれいな夕日を、今度は地元でBlake君と一緒に眺めて感動して下さいね。
・・今は走るのが速くてそれどころではないですかぁ?(汗)。
かぜさんもBlakeくんも寿命が何年か縮まった思いをされたのですね。ん~、お散歩大好きなBlakeくんの溢れる好奇心が招いた災難でしたが、無事でなにより。そして、ちゃんと反省している風なのもなにより。頭こずかなくても伝わっているじゃないですか!かぜさんとBlakeくんの日々、既に航海中なのですよね。「あんなこともあったっけなぁ」と後で笑えるような、そんな風でありますようにお祈りしてます。
コラアゲンさんの常打ち小屋?も楽しみな話ですね。
逗子… 夏に『音霊』コンサートを聞きに行きましたが、夕焼けは素晴しかったです。しかも夕焼けの頃の演目がサンバ調で、歌っていた人がブラジル人とのハーフで「この目の前の海と、俺の母ちゃんの故郷の海とは繋がっているんだよなぁ!!」とか叫んで、ものすごく感動したことを思い出しました。
小西さんという方に対するかぜさんの想いと、私たちがかぜさんに対する思いは似て非なるもの…だと感じますが、でも“何時間かけても会いに行きたい人”という気持ちは、なんだかふっと「あ、同じ」と思えたり。
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