2010年2月5日金曜日

逃走のスキャット



最近、Blakeは立て続けに2度逃走した。
1度は僕が鎖を解いているのを忘れて玄関を開けてしまったからだ。彼が向かったのはこの家に来てわずか4日目に噛みつかれて大怪我を負わされた「武蔵」の小屋だった。「武蔵」は小屋に繋がれている。卑怯にもBlake は繋がれている「武蔵」に吠えかかった。
けれど一度噛まれているので怖さは知っているらしく、飛びかかりはしない。
「ホラ、俺は今、フリーハンドだ。おまえは飛びかかろうとしてもこれやしないだろ」
そんな吠え方。
僕は大声で叱りつけて、彼を抱えて家に戻した。
興奮してる風でもなく、言われるまま鎖に繋がれて一件落着した。
単に「武蔵」に吠えたかっただけのようだった。


2度目は昨日の朝だ。
実は僕は11月20日からBlakeと散歩していない。
症状が出始めてから三度目、前回からは3年ぶりに頸椎からの痛みが始まったらしく、腕が上がらなくなってきた。
これが始まると6ヶ月は覚悟しないといけないので妹にBlakeとの散歩を頼むことにした。
Blakeは妹に一番従順で身体のシャンプーも僕の言うことはきかないが妹には黙って従う。
彼女は自分自身が散歩を命じられている体調なので快く引き受けてくれ、現在に至っている。
彼女はかなりの距離を歩いてくれるのでBlakeは彼女との散歩を楽しみにしていて、7時には玄関に出て、彼女が家にやってくる方角をジッと見ている。いつまでもいつまでもそうしている。
彼女の姿が見えると、喜びが絶頂に達してしまってなんとも言えぬ、甘い、可愛い、だが狂った鳴き声を上げる。狂喜の声だ。
そして、数メートルにまで近づくとすでに喜びを通り越して声は命令に変わり、「早く散歩に連れて行け」と威張って吠え散らす。だが、その威張り声の中にも甘え声が混じるのがなんともハヤ、だ。

ま、散歩の仕方は相変わらずで、急に走り出したり、向きを変えたりするので彼女は度々脱臼しそうになっている。
「Blake、力がついてきちゃったから兄ちゃんにはもう散歩させられねえよ」
が彼女の見解だ。


さて、昨日の逃走は僕が散歩に送り出す時、鎖を掛ける輪を間違えたのが原因だ。
急に動いた時、首輪がキュッと締まって警告するものをインストラクターが置いていってくれたので、それを使っているのだが、僕は警告しない輪に鎖を掛けてしまったのだ。
つまり、警告するために首輪自体がもともと緩く出来ているのだが(弛みがあるから急に動くとそこが絞られて首輪が締まる。もちろん、あまりきつくは締まらない仕掛けになっている)、首輪の根本2点と鎖を掛ける頂点とに輪があって、頂点に鎖を掛けると根本が絞られるのだが、僕は間違えて根本の輪に鎖をしちゃった。
これだと、もともと緩くできているので、ちょっと無理すると頭からスポッと首輪が外れてしまうのですね。で、その通りになった。
Blakeは逃げました。時は登校時。
子供に噛みつく心配を僕は全くしていないのだけど、逃走だって予想外なんだから、何が起きるかは判らない。
妹は彼女のご亭主と僕とに電話した後、車で探し始めた。
これまでの経験からそんなに行動半径は広くない、と思ってはみるものの、逆に言うと、半径外に出てしまったら、彼自身にも戻り方が判らなくなってしまうことにもなる。
まあ、マフラーも耳当ても、ましてやマイナス気温対応の重装備もしないまま慌てて家を出てしまったことを悔やみながら想定コースを歩いてみましたのサ。
ちょっと散歩コース外にも出てみました。

およそ20分。
踏切を挟んでかなり急勾配の坂道の、その途中の石段から義弟が降りてきて、「どこにもいないねぇ」と落胆顔。
でも僕はその時、なんとなく閃きましたのサ。
Blakeが逃走を始めてからの時間を考えると、しばらくはウロウロ。その内、少しは迷い、少しは叱責を覚悟していつもの散歩道を辿って家路を目指す。
でも、すぐには家に戻りにくい場合、我が家の近所数軒以内、おそらくは前の逃走の時と同様、どこかの家の植え込みの陰で発見されるのを待っているのじゃないかなぁ。
僕はそんなことを思いながら義弟が降りてきた我が家の裏の家の石段を昇ってみましたのサ。
わが家からおよそ30米。
なんか、石段を上り終えた植え込みのあたりからヒョコッと姿を現すのじゃないかなぁ、なんてね。

案の定でしたねぇ。
「キュ~ン」と一声、僕の前に飛び出した彼は前回同様、お腹を上にして足をばたつかせる始末。
「おい、どこに行ってたんだァ?」
怒っても仕方ないので甘い声で呼び寄せ抱き上げると、おとなしく腕の中に収まって尻尾を振り続け、みんなを巻き込んでの逃走劇だったなどとは微塵も思っていない様子。
義弟妹にケータイで無事確保を伝え、落着いたしました。
Blakeは集まったみんなにも尻尾を振って愛嬌を振りまき、悪びれた風情は毛ほどもなく、みんなも仕方なく疲れた顔で笑って済ませました。
だけど、実際には彼は自分が何か悪いことをしたらしいことには気づいているんですね。
昨日一日は聞き分けも良く、ご飯も完食しました。
ただ、今朝は昨日の出来事をすっかり忘れていて、朝食もふた口くらいで止めて、今日も隣の猫に全部平らげられてしまいました。


ところで、僕はオ隣の猫がちょっとキライ。猫好きな人を考慮して「大嫌い」と言えないところが痛し痒し、って、もう言っちゃったも同然か!?
なぜって、彼ら(今や数が増えてしまって何匹いるのか判らない)は玄関の柱の下がBlakeの食器の置き場所であることを承知で、しかも、自分たちは毎日、盗み食いに来ているくせに、夜の内にそこに小便をして行く。意地悪な連中だ。
我が家の玄関はおろか、ポストの下や自転車用スロープなどにも、まあ、至る処にして行く。
最近は家の中から「シッ」と追い払うことにしているのだが(ちなみに猫を追い払うことから生まれた言葉が「スキャット」。「シッ、キャット」=「スキャット」)、あまり効き目はない。

今日は良い天気。
写真を撮ろうと思いましたがBlakeは大の写真嫌い。
カメラを向けた気配だけで寝転んだり物陰に隠れようとして、絶対にこちらを向こうとしません。
これまでのは奇跡的なベストショットだったのですが、今日の1枚は寝転びながらもチラリと僕の機嫌を窺ったモノ。
撮られるのはイヤだけど一応気も遣ってる、という1枚です。

3 件のコメント:

和歌 さんのコメント...

店主様こんばんは。

日付がかわりましたが昨日はとても寒かったですね。
店主様のお住まいの地域では雪は積りましたでしょうか?
私の住んでいる地域では10cm程積り、愛犬(母曰く愚犬)2匹は昨年の春と夏生まれなので初めての雪に恐々しつつも嬉しそうに遊んでいました。

この度のBlakeくんの「逃走劇」は無事で何よりでした。
お話を伺いお人事に思えず安堵致しました。
お話に出てきた猫が憎たらしく、今すぐにでも
愛犬2匹を従え成敗に伺いたい気持ちです。
猫好きな方には大変申し訳ありませんが母が幼い頃に飼っていた鶏(新鮮な卵を食べたいため)や鳴き声の素晴らしかったカナリヤを、野良猫に殺されたりして我が家では猫はダーティーなイメージです。
江戸っ子だった曾祖母はよく「猫のかけしょんべん」は臭くてやだね、と言っていたそうです。
何か気に入らないと猫が仇をして炭などにもかけしょんべんをしていき、火鉢にその炭をくべると母の記憶でも臭かったそうです。
余談でしたね…ゴメンなさい。
Blakeくんの奇跡の写真今回もとても可愛かったです。
我が家の犬もそうですが猿ではありませんが反省をするんですよね。
また是非Blakeくんのお話をお聞かせ下さい。

折から店主様&Blakeくん御体お大事になさって下さい。

isoji さんのコメント...

おはようございます。冷たい朝ですね。
風はなく伊豆大島がくっきりと見えて家の中にいる分には気持のいい日です。

Blakeくんの脱走は心配だけどなんだか可愛いです。余程の事がない限り必ず家に帰ってくるんだとは思いますが、何があるかわかりませんからねぇ。

以前市川で棟続き長屋?テラスハウス?に住んでいた時、お隣の猫が玄関先にいやがらせか!と云う位、う○こ、おしっこをまき散らかして、すきあらば一階からも時には二階のベランダからも家の中に入ってきて悪さをしたので、猫はちょっと冷めた目で見てしまいます。世間には可愛い子もいるんだけど・・・

日差しには春を感じますが、まだまだ寒い日が続きます。うちの犬は寒さのせいか夕べからお腹をこわしてちょっと可哀想な状態。
整腸剤を飲ませて様子をみています。

かぜさんBlakeくん、ご自愛ください。

LIMIT さんのコメント...

こんばんは。日中はとても暖かく、過ごしやすい日でした。かぜさんは、いかが過ごされましたか。

やんちゃなBlake君ですね。因縁の武蔵に、どうしても何か一言言ってやりたかったという執念みたいなものを感じて、なんか笑ってしまいました。いや、他人事だからそう思うのであって、店主さまにしてみたら他人の敷地に入ったことやら、また何か一波乱起こしたらと気が気でなかったこととは思いますが。

脱走してもすぐ近所に隠れていて、見つけてくれるのを待っているのも…かわいいですね。Blake君は、どこぞのワンコのように噛み付く犬ではないと思うのですが、犬嫌いな人にとっては恐怖の対象になるでしょうし…やはり脱走は良くないですね。手綱の確認はしっかりとしておきましょう。

まだ、お散歩では前を歩くのでしょうか?インストラクターさんの時と態度を使い分けているとか?Blake君もかぜさんといっぱい遊びたいなら、並んで歩けるようになったらいいのに!本当に、めっ>Blake君

うちのワンコも写真撮られるのが嫌いです。一緒ですね(^^;