2016年10月14日金曜日
大江戸ワハハ本舗・娯楽座のコメディ・ミユージカル『真夏の夜の狸御殿』
10/13(木)-15(土) 下北沢・『劇』小劇場
久しぶりの下北沢。ヘトヘトになってたどり着いた。
というのも普段が静かな田舎暮らしで、毎日リハビリに明け暮れてる日々だからねぇ。
どっか具合の悪い人と穏やかな冗談言いながら身体のストレッチや口のストレッチをしに施設のバスに乗って移動してるんだからねぇ。
もう、人混みと、若い息吹に触れるだけで疲弊仕切っちゃうのよ。
でも、時には東京に出ないと、ただの爺になるだけだから、老骨に鞭打って、トークショーしたり、コンサートしたり、サイトのOFF会したり、とそこそこの動きはしてるんだけどねぇ。
「ダンス映画」特集で男性ストリップクラブ版「イブの総て」の『マジック・マイク』を語っても、まあ、そんなに驚いてはくれない日々なのよ。
その点、僕の旧友の喰始(タベ・ハジメ)はやることちゃんとやって、目論見通り受けてるワ。
タベちゃんは誰も騒いでいない頃から寺山修司を上手にコラージュしたり、アレン・ギンズバーグなんかに傾倒する特異な才能を持っていて、いつの間にか、その人たちで遊ぶ手まで考えちゃった。
ワハハのお下劣も知性もタベちゃんが本来持ってるモノだけど、タベちゃんが育てた若い劇団『娯楽座』は「ワハハ本舗」のミニ版になっていないのが素敵だ。
やってることはワハハとそんなに違わないけど、下品にも下劣にもなっておらず、どこか品の良ささえ感じる。座員の心構えが、なのかも知れない。
3年前、浅草復興の一環として公演場所をやるから何か新しいことをやってくれと言われたタベちゃんは芝居好きの若者を公募して「娯楽座」という劇団を作った。経験の少ない若者たちだけで毎月一本づつの新作公演に挑んだ。ワハハの新人で、あまり、悪達者でない三人、星川桂、矢原加奈子、村本准也を紛れ込ませたのもタベちゃんの知恵だろう。
しかし、いかんせん知名度がない。当然、集客力に欠けた。それでもいいと言ってくれていた小屋主もさすがに業を煮やした。
昨年7月を限りに「娯楽座」は発表の場を失くしていた。
あれから1年3ヶ月。ヤツらは帰ってきた。
カフェシアターっぽかった浅草から芝居のメッカ、下北沢の、それもいかにも小劇場向きの「『劇』小劇場」という小屋へ。
僕の友達石井信之が主宰する「ミノタケプラン」がいつもここを使っていた。
石井君は僕の番組『たむたむたいむ』が募集した『たむたむ音頭』の作詞者で当時まだ高校生だったが満場一致で決まったほど鮮やかな詞を送ってくれた。
官庁に就職したがすぐに「富良野塾」一期生になり、ドラマ作家を経て、劇団を立ち上げた。彼の芝居を見に来たのが4年くらい前で、以後、何度か誘ってもらっていたが、病気で叶わず、下北沢自体が4年ぶりなんである。
芝居一座を率いていた蜷川幸衛門はある日突然、座員たちから役者廃業を言い出され、慌てふためく内に一座そのものから放擲され途方に暮れる。
悩みの森をさまよう途中、狐に吹き込まれたのが「バカが付くほどお人好しの狸を役者にしちゃえば?」
満月の度、腹鼓を打っては踊り、歌うのが大好きな狸たちを上手く一座に仕立て上げ、演ずるは「大爆笑ミュージカル悲劇・シェークスピアだよ全員集合」みたいなレヴュー。
「月メドレー」でワクワクさせて「オーデイション」で『娯楽座』メンバー個々の特技を知らせ、「役者あるある」でくすぐり、「稽古」でシェークスピア劇深読みの面白さと主な戯曲タイトルや登場人物を教え、「歴代ミュージカル名ナンバー」を使って稽古の仕上がり状況を伝え、随所でこの一座(娯楽座)のアンサンブルの良さを観客に擦り込んで行く。
タベちゃんの芝居は、佐藤・柴田の『ラブ・ストーリー』の頃からかなり知的な要素が散りばめられているのだが、ここでもシェークスピア劇を一応知っている人の方が、より楽しめる仕組みがいくつかある。『ハムレット』の端役、ローゼンクランツとギルデンスターンまで登場するんだけど、彼らを主役にした『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』という芝居もあることを知ってる人には「おお、そこまでカバーするか」みたいな愉悦を与える仕組みになっていたり、いつものごとくサービス満点で、アングラ芝居とミュージカルを知っていると楽しみが何倍かに膨らむのがタベ芝居の神髄だ。
今回は山崎洋平(江古田のガールズ)の「脚本」にも手助けされているので楽しみどころ満載。
「ワハハ本舗」の下部劇団だった「オホホ商会」の初期をふと懐かしく思い出すのだが、「オホホ」より一芸を持つ座員が多いのと、手練れ感のない清潔さが心地良い。
村本、矢原、星川がへこたれずにやっているのも個人的にはとても嬉しく、杖を頼りにやっとこさ下北沢まで出かけた甲斐があった。
心機一転の「娯楽座」の今後に期待。
公演は明日まで。明後日は別の一本を演るらしい。
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