2013年6月8日土曜日
訃報
仕事仲間だった製作会社の社長Sの訃報を受けた。
それも直接ではなく彼の取引先撮影機材会社に来たFaxによってだ。
そのFax内容も僕の友人Kに知らされたもので、彼が友人でなければこの知らせは遂に僕まで届かずに終わったろう。
ちなみに友人Kは僕の退院日から付き合ってくれてあと数日は我が家にいるのだが、彼が滞在していなければやはり、この訃報は僕に伝わることはなかったと思う。
何故なら「かぜさんには絶対報せが来てると思ったよ」と彼は思い込んでいた。
僕らは比較的仲の良いチームだった。
製作現場共通のトラブルは始終あったがそれが原因で二度と顔も見たくない、というようなことにはならなかった。
実は数日前の夜、妙なことが起きた。Blakeにせがまれて夜の散歩に出たKが「俺、霊を連れ帰っちゃたかもしれない」と馬鹿な事をいい始めた。
僕の家は寺の前にあり、犬の散歩コースは墓地の中の小道だ。
その晩、Blakeは突然、土を掘り返し何故かその周りで無闇に綱を引っ張ったのだと言う。
「なんかさあ、その後、肩が急に重たくなったんで、気持ち悪くって帰ってきちゃったんだ」
そんな話の最中にもBlakeは虚空に向かって飛び上がったり、何かを捕まえようとする。
「Blake、止めなさい」
とイラつく僕。
「なんか居るんだよな、Blake」
と馬鹿な事を言っては、自分で怖い材料を作り出してるK。
「くだらん!」
僕は不愉快になって寝室に入った。
社長Sがその日に亡くなったのを知ったのは昨日の事だ。
撮影会社の重役がラジオのスタジオにKを訪れFaxを渡した。
録音が済むまで僕に知らすのを控えていたKが
「あの晩、Sさん、会いに来てくれたですかね?」
「そう言えば何日か前、俺たちSちゃんの事、話題にしたな」
たまさかの偶然ではあったろう。
でも、…。
通夜は明日夜だという。
お別れしてこようと思っている。
そしてひとつ心の準備を整えたいと思った。
生前親交があり、自分を葬って欲しい友人リストはちゃんと作って判るようにしておかないとな。
もしくは誰にも知らせず独りで逝くか、を決めておかないとなあ…。
今日は膝の注射日。
クリニック玄関のツバメの巣にはもう親鳥たちは居なかった。
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