2014年3月5日水曜日

第86回(2013年度)アカデミー賞授賞式

 2014年3月3日 於: LA.ドルビーシアター

今年は授賞式に先駆けて何本かが公開されていたが健康上の理由で一本も見ていない。
ただ、僕は毎月『SCREEN』誌を愛読しているのでどれもが評判作なのは知っていた。
近年にない粒ぞろいの秀作揃いらしいのだ。
しかも主演賞、助演賞にノミネートされている俳優たちが『それでも夜は明ける』の出演者と『キャプテン・フィリップス』のバーカッド・アブディ以外はすでに全員知っている名前ばかり(でも20人の内4人知らないんだから相当知らないことになるね)。
特に『ダラス・バイヤーズクラブ』で候補になったマシュー・マコノヒー(『スクリーン』誌の記述は「マコナヘイ」。McConaugheyなのでアリかもね)とジャレッド・レトー(以前の記述は「レト」)に期待した。
78歳になるブルース・ダーンにもあげたいし、去年書いたようにブラッドリー・クーパーはテレビ『エイリアス(ビデオタイトル『二重スパイの女』)』からのファンなので2年連続ノミネートに驚いている。
ブルース・ダーンは僕ら世代には『11人のカウボーイ』で主役のジョン・ウェインを射った牧童役で認知された。
その他大勢から徐々に役がつき、台詞が増え、重要な脇役にまでのし上がったが、初めての主演作『サイレント・ランニング』は日本未公開でビデオ時代に入ってやっと評価された。
その間に娘のローラ・ダーンの方が有名になってしまった。
授賞式ではローラがずーっと父親の手を握ってやっていたのが印象的だった。一瞬、獲らせてやりたいなぁ、と思ったほどだ。

けど、どれも面白く良く出来た作品なのにインディーズ系もしくは低予算映画の主役という印象が強く、最近はテレビシリーズでお茶を濁してる感じの格落ち感があったマシュー・マコノヒーにオスカーを握らせてやりたかった。
僕は『評決のとき』『マーシャルの奇跡』『リンカーン弁護士』あたりが好き。
近年はオスカーにノミネートされないことに疑問が呈されるほどの名演が続いていたというのだから、まあ、このあたりで獲らないと一生獲れないタイプの演技派だ。
今回の作品ではHIV患者に扮するため20kg超を減量したため、体調が元に戻らず苦しんでいる、という噂も…。
ちなみに助演賞候補のじゃレッド・レトも20kg近い減量をしている。レトは『チャプター27』(日本では『ジョン・レノンを殺した男』という副題がついていた気がする)で演ったマーク・チャプマン役の印象が強くてやたらデブ、という印象があったためレッド・カーペットに登場した時は気づかなかった。
テロップで「エーッ、ジャレッド・レトって超ハンサムじゃん」と感じ入った次第。そう言えばこの顔、雑誌で何回か見たけど、チャプマン役の彼とは結びついていなかった。
日本のインタビューに答える時間がなく、「必ず戻ってきて答えるから」と約束して足早に通り過ぎたが、ちゃんと戻ってきて笑顔でインタビューを受けた。
それもそのはず、レトは「火星まで30秒」とかいうバンドも持っていてその日本公演がたしか間近い。そう言えばチケットを販売してたな、と思い出した。
ちゃんと自分のプロモーションを忘れなかったところがエライな。気に入った。
『アメリカン・ハッスル』で主演賞候補のクリスチャン・ベールは『バットマン』役者として知られるが、以前から役のためには命をも張る種類の俳優だ。
寝不足男の『マシニスト』では死にそうなほど痩せ、一昨年助演賞を獲った『ザ・ファイター』ではヤク中の兄貴を演じるためにまた激ヤセして魅せた。
『アメリカン・ハッスル』ではデブでおでこがハゲ上がった男を演るために、今度は激太りして、髪を何本も抜いたという。
身体を役に合わせることがニュースになり始めたのは『レイジング・ブル』(1980)でロバート・デ・ニーロが重量級ボクサーを演じるために30kgも太って主演賞を獲得した頃からで、日本でも「スッゲー」と大騒ぎになった。
この手の役作りを「デ・ニーロ・アプローチ」と呼ぶのはそのためだが、『ゴッド・ファーザー』でマーロン・ブランドがオーデションの時から口の中に含み綿を入れていた、なんてのは、もう、可愛いエピソードにしか過ぎないのかしらね。

WOWOWのレッドカーペット・インタビューは隣に『アメリカン・アイドル』(おまけにエンターテインメント紹介番組『E!』の司会もしている。ほかに『ジェイミー・オリバーの給食革命USA』などの良心作のプロデューサーでもある)で知られるライアン・シークレストがいたため、全部そっちに持って行かれ、ほとんど成功していない。
だが、あとでビックリすることになるのだが、レッド・カーペットで一番最初にインタビューに成功したのは『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴ。初めて見た顔だけどその輝き方に一種独特な華があって、日本で生放送をしている人たちが「彼女、勝つかも」と予想していたのはさすがだ。

そうこう思う内、いよいよ授賞式は本番を迎えた。
司会はエレン・デジェネレス。実はこの人も『アメリカン・アイドル』のレギュラー審査員を務めたことがある。笑顔に嫌みのない女性で日本でも『エレンの部屋』(『徹子の部屋』アメリカ版)が放送されているのだが、レズビアンであることをテレビでカムアウトした最初のスターとして知られている。
みずからの冠番組では自身の経験からなのか、ゲストの嫌がる質問は最初から避けている感じがあって、好感は持てるのだが突っ込んだ内容は期待できないので評判ほどには面白くない。海外スターのゴシップだったら僕の方が詳しいくらいだ(笑)。

今回、日本人関連は3本。「長編アニメ」部門で宮崎駿さんの『風立ちぬ』、「短編アニメ」部門で森田修平さんの『九十九(つくも)』、「長編ドキュメンタリー」部門ではザッカリー・ハインザーリング監督が日本人の芸術家夫婦を追った『キューティー&ボクサー』。ボクサー篠原有司男さんと妻・乃り子さんの凄絶な芸術生活は少し覗いてみたい気がした。ま、怖い感じもするのだけど…。
と言っている内に日本関連はいずれも賞を逸してしまったのがちょっと残念。
ちなみに「長編ドキュメンタリー」部門の受賞作は『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』。僕の友人、藤井正博さんイチ押しの作品でした。

ところで授賞式の始まりは助演男優賞からなので早々とジャレッド・レトが受賞した。
好青年(と言っても40代半ばだと思う。ケネディ大統領も44歳で「青年大統領」と呼ばれてたんだから別にいいよね)の曲者俳優というのはちょっと面白い存在だと思う。

短編アニメの受賞者たちは受賞の言葉を用意していたが、メモを持つ手が最後まで震えていた。感動が伝わってきて、僕は泣いた。

ま、今年は粒揃いだけど、その分、点数もつけやすかったのか、僕の愛読誌『SCREEN』の予想は全部大当たり。

助演女優賞は『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴ。

監督賞は『ゼロ・グラビティ』のアルフォンゾ・キュアロン。
過去に『リトル・プリンセス』やリメイク版『大いなる遺産』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』など僕の好きな作品を監督していました。
でも、今度の受賞作は全く新しい手法で過去の作品の比ではない模様。

入院している間にずいぶん沢山のスターが亡くなってたんですね。テレビも活字も見られなかった(見る気が起きなかった)ので全然知りませんでした。
ジェイムズ・ガンドルフィーニ(テレビ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』)、カレン・ブラック(彼女の代表作ではないけれど『ナッシュビル』の病んだ歌い手役が好き)、ハル・ニーダム(超有名なスタントマン)、『ワイルド・スピード』シリーズのポール・ウォーカーも!
往年の美女『オーケストラの少女』のディアナ・ダービン、なんと『アラビアのロレンス』ピーター・オトゥール、特殊効果の巨人レイ・ハリーハウゼン(何日か前に彼の伝記映画を録画したばかり)、テンプルちゃん、ヒチコックの『レベッカ』『断崖』で知られるジョン・フォンテーン、『サウンド・オブ・ミュージック』の男爵夫人エレノア・パーカー、『エデンの東』ジミーの相手役ジュリー・ハリス、『ニュールンベルグ裁判』でアカデミー賞のマクシミリアン・シェル、『水着の女王』エスター・ウィリアムス、そしてフィリップ・シーモア・ホフマン。入院前、最後に見たのが彼主演の『ザ・マスター』だった。
他にも名脇役クラス何人かと名を知るプロデューサーがいた。
僕らの時代はスタントマンの名前まで知っているほど映画の時代だったんだなぁ、と改めて映画に感謝。ありがとうございます。
そして追悼・コーナーを締めくくるようにベット・ミドラーが『愛は翼に乗って』。
やっぱり涙が出てきました。

主演男優賞はやったね、『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒー。
過去の作品も見直されて、みんなきっと面白い、と言ってくれると思う。
レオちゃんは今度も獲れなかった。いつもイイ仕事してるのにもったいないねぇ。ポール・ニューマン同様、若い頃から騒がれて、人気もたしか、腕もたしか、というスター性にみんなが嫉妬して、歳取るまで賞をあげる気がないという図式かな。

主演女優賞は『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェット。
まあ、この人は上手いんでねぇ。メリル・ストリープみたいに何度候補になっても不思議のない人になって行くんでしょうね。そのメリル・ストリープはこれで18回目のノミネート。

そして作品賞は『それでも夜は明ける』。原題の通り奴隷モノです。辛そうな作品だが見るつもり。
なんと製作者はブラッド・ピットです。昨年の『アルゴ』(制作陣にジョージ・クルーニー、ベン・アフレック)同様、クルーニー一派はハリウッドでやたらな好感度の高さなんでしょうね。目利きって事もあるのかな、彼らは。

敬意を表して主要部門のノミネートを全部書きました。
★印が受賞作です。

作品賞
 ★それでも夜は明ける(12 Years a Slave)
  アメリカン・ハッスル(American Hustle)
  キャプテン・フィリップス(Captain Phillips)
  ダラス・バイヤーズクラブ(Dallas Buyers Club)
  ゼロ・グラビティ(Gravity)
  her/世界でひとつの彼女(Her)
  ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(Nebraska)
  あなたを抱きしめる日まで(Philomena)
  ウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street)
アニメーション作品賞
 ★アナと雪の女王(Frozen)
  クルードさんちのはじめての冒険(The Croods)
  怪盗グルーのミニオン危機一発(Despicable Me 2)
  アーネストとセレスティーヌ(Ernest et Celestine)
  風立ちぬ(Kaze tachinu)
監督賞
 ★アルフォンソ・キュアロン (ゼロ・グラビティ)
  デヴィッド・O・ラッセル(アメリカン・ハッスル)
  アレクサンダー・ペイン(ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅)
  スティーヴ・マックィーン (それでも夜は明ける)
  マーティン・スコセッシ (ウルフ・オブ・ウォールストリート)
主演男優賞
 ★マシュー・マコノヒー(ダラス・バイヤーズクラブ)
  クリスチャン・ベイル(アメリカン・ハッスル)
  ブルース・ダーン(ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅)
  レオナルド・ディカプリオ(ウルフ・オブ・ウォールストリート)
  キウェテル・イジョフォー(それでも夜は明ける)
主演女優賞
 ★ケイト・ブランシェット(ブルージャスミン)
  エイミー・アダムス(アメリカン・ハッスル)
  サンドラ・ブロック(ゼロ・グラビティ)
  ジュディ・デンチ(あなたを抱きしめる日まで)
  メリル・ストリープ(8月の家族たち)
助演男優賞
 ★ジャレッド・レトー(ダラス・バイヤーズクラブ)
  バーカッド・アブディ(キャプテン・フィリップス)
  ブラッドリー・クーパー(アメリカン・ハッスル)
  マイケル・ファスベンダー(それでも夜は明ける)
  ジョナ・ヒル(ウルフ・オブ・ウォールストリート)
助演女優賞
 ★ルピタ・ニョンゴ(それでも夜は明ける)
  サリー・ホーキンス(ブルージャスミン)
  ジェニファー・ローレンス(アメリカン・ハッスル)
  ジュリア・ロバーツ(8月の家族たち)
  ジューン・スキッブ(ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅)
オリジナル脚本賞
 ★Her/世界でひとつの彼女
  アメリカン・ハッスル
  ブルージャスミン
  ダラス・バイヤーズクラブ
  ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
脚色賞
 ★それでも夜は明ける
  ビフォア・ミッドナイト
  キャプテン・フィリップス
  あなたを抱きしめる日まで
  ウルフ・オブ・ウォールストリート
主題歌賞
 ★"Let It Go"(アナと雪の女王)
  "Alone Yet Not Alone"(Alone Yet Not Alone)
  "Happy"(怪盗グルーのミニオン危機一発)
  "The Moon Song"(her/世界でひとつの彼女)
  "Ordinary Love"(マンデラ 自由への長い道)
外国語映画賞
 ★グレート・ビューティ/追憶のローマ(イタリア)
  オーバー・ザ・ブルースカイ(ベルギー)
  偽りなき者(デンマーク)
  The Missing Picture(カンボジア)
  Omar(パレスチナ)
長編ドキュメンタリー賞
 ★バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち
  アクト・オブ・キリング
  キューティー&ボクサー
  Dirty Wars
  The Square
短編ドキュメンタリー賞
 ★The Lady in Number 6: Music Saved My Life
  CaveDigger
  Facing Fear
  Karama Has No Walls
  Prison Terminal: The Last Days of Private Jack Hall
短編アニメーション賞
  ★Mr. Hublot
  Feral
  ミッキーのミニー救出大作戦
  九十九
  Room on the Broom

0 件のコメント: