2008年9月18日木曜日

白いスポーツ・コート

昨日は新宿「プーク」で『喰始のショービジネスの作り方』。
思えば「髭男爵」は何年も前からこの舞台で見ていた。
売れる気配さえなかった頃から、ということになるが、他の芸人集団とはちょっと色合いが違っていたのが、今になればよく判る。

今、この舞台で誰とも違っているのは「コラアゲンはいごうまん」で、昨日のテーマは「新潟刑務所慰問」。
全国ツァーの最中に訪れた新潟で取材も兼ねて刑務所の慰問に出向くことになった話だが、コラアゲン君の伝え方は非常にシンプルで的確になってきた。
「脳性麻痺」コントの実話には笑って泣いた(本当に「脳性麻痺」の人がふたり組コントをやっているのだ)。
終演後、劇場の外にいたら、客が「コラアゲンは上手いねぇ」「上手になったよねぇ。笑った笑った」と満足そうに帰って行った。
彼らもこの催しの常連さんなんだろう。
コラアゲン君の面白さはこの催しでは群を抜いている。
笑いの部分だけでなく泣かせにかかる部分への運びが実にスムーズで、妙なテクニックを感じさせない。客の感情の起伏を巧みに引き出すので、鈍感な人はまだ笑う話なのだと思って笑い続けているのだが、気づくと周りはもう泣いている、というような上手さなのだ。
観察眼に磨きがかかってきて、他人の話や動き方を聞き逃したり見逃したりしていない。

もうひと組「キャラメル・マシーン」という奇術のふたり組がいるのだが、彼らも毎回、客を湧かせている。
手品自体が見事なのもさることながら、助手の青年の、奇術には全く関係のない無駄な芸が、とにかく全部ピタリと決まって、客を飽きさせることがない。
上手い。コンビネーションも抜群で、コラアゲン君とキャラメル・マシーンのふた組だけで十分にお金を払った甲斐がある。

あとは見るだけ聞くだけ時間の無駄、みたいな個性の定まらない人たちが多いのだが、「西口プロレス」の「ジャイアント小馬場」さんと同じグループのオカマ漫才はキャラが確立している。
小馬場さんはちゃんと馬場さんに似ていて、そのくせ、妙にリズム感がよい、という変な人で、ネタさえシッカリしてくればもう少し笑えるかもしれない。
オカマ漫才は小汚くなっていないのがイイ。
ただ、オカマキャラを取っ払った時、面白いのかどうかが今ひとつ解らない。
手慣れているので笑いは十分に取れるのだが、このキャラ作りにはちょっと手垢がつきすぎているかもしれない。

芸の年数だけが売りになってしまった人や、結成から日が経っていないことや若いので許されると考えているような人まで玉石混淆なのだが、コラアゲン君とキャラメル・マシーンはそのどちらでもなく、毎回、新しさを感じさせてくれることにいつも感心している。
彼らは今日18日は仕事で出演しない。
褒めてもその芸を見てもらえないのが残念だが、どこかで見る機会があったら注目してやって下さい。

ちなみに劇団「ミノタケプラン」の『空飛ぶ隣人』は行ってみたら大入りでしたね。
初日、二日目は空席が目立ちます、というメールによる客引きが功を奏したかもしれない。

舞台はいつもの通り上出来で、石井君の世界を満喫。
なめらかな筋運び、こなれた会話にいつも感心するのだが、見る度、僕は舞台でしかできない、舞台でしか見られない物とは何なのか、と考えてしまう。
もしかしたら、その部分の驚きが足りないような気もするのだが、マンションからの宇宙飛行士誕生、その人のためにサプライズ・パーティを企画する住人たち。彼らには5年の理事免除の資格が与えられるという特権。でも、彼らは誰もその宇宙飛行士と顔見知りではない。ただ一人、彼を知る隣人はとんでもなく変わった奥さんで…、という設定の上手さに感心。
よくある日常風景の中で、一人一人の持つドラマが転がり始めるという手法は元々はテレビのモノだが、テレビがあまりに突飛な、あり得ないドラマ作りばかりし始めたので、むしろ新鮮に見えたりするのが妙。

マンションの理事をこの6月に終えたばかりの僕には笑えるツボが満載で驚喜してしまったが、不思議だねぇ、客の大半がクスリともしない。
真面目~ェに見ている。
隣にタータンチェックのスカートを穿いた(コスプレ魔でもない限りは純正の)女子高生がいたが、彼女は最後まで笑い声ひとつたてなかった。
普通は芝居を見ている時、隣の人の反応なんて気にもしないが、あまりに反応がないので段々彼女が気になって仕方がなくなった。
もしかすると彼女たちの「ステージを見に行く行為」ってのは「一発ギャグ」や「一瞬ギャグ」を見に行くということなのかもしれない。
しかし、芝居はコントの連なりではないので彼女たちは戸惑っているのかもしれない、などとも思ってみたのだが、真実はどうなのか?
単純に「面白く」ないのだとしたら、それは芝居を楽しむセンスが欠けているだけのこと。お金の無駄だから見に来ない方がよいと思う。鍛えられないモノだと思うので。

この頃、アクション・コメディの『トランスフォーマー』を大笑いしてみていると席を蹴られたり、おかしいエピソード満載の舞台を全然笑わない客と見ていたり、となんか、世間と僕の感覚には大分開きがあるようなのだ。
まあ、「流行り者」予測はそんなに外してはいないので、センス自体も僕はそんなにズレてはいないと思うのだが、過信か…。
まあ、「相撲」を外したのでちょっと自信はなくなってるが…。

2008年9月9日火曜日

命果てる日まで

この年になるとかなり頑迷になっているので、自分にとって口当たりの良い話とか、藁をも掴む思いで自分にとって都合の良い意見ばかり採用するのかも知れない。
大相撲に関しては僕の頑迷ぶりが全部の判断を誤まらせていたようで、すっかり落ち込んでいます。
理事長辞任でも理事として留任、はさすがの僕にも詭弁を弄する術がない。残念だ。
ただ、ファンを止めることは、まあ、出来なくはないんだけど、僕は「妄執の人」なので、目を離すことが出来ないかも。
もう、語りませんけどね。

今日はこれから下北沢まで芝居を見に行きます。
『たむたむ音頭』の作詞公募で一位になった石井信之君の主催する劇団「ミノタケプラン」第9回公演『空飛ぶ隣人』を見るためです。
ハックルベリー、阿鬼羅君、そして石井君。30年以上のつきあいになる。
こういう機会がこれからあと何年持てるのかな、などと先行き不安にも駆られる毎日なのだが、なぜか69歳から「ラジオ時代の再現とも思えるような大活躍期」に突入する運だとのご託宣が、つい最近、あった。
ホントかな。
ホントでなくともその希望に縋って生きて行くよすがにはなるかも知れない。

ただ、その時、僕の記憶力は健在なのかな。
まともに喋れるのかな。
身体も記憶も舌もヘタって、忙しさだけ復活することはあり得ないと思うので、なんとかあと5年、生き延びてみなければそれを確かめることが出来ない。
まあ、老人の世迷い言かも知れないけど。

あ、身体も記憶も舌もヘタってても「歌」なら書けるのか。そういうことかも。

ちなみに「ミノタケプラン」、今日明日は空席が出来ちゃってるらしい。
7:30からの開演、とまだ時間もありますので、突然の都合がつく方はぜひ、見てやって下さいな。
詳細はhttp://www.minotakeplan.com/でご覧下さい。

2008年9月7日日曜日

ストーミー・ウェザー

『オーシャンズ13』『七人の侍』『チャタレー夫人の恋人完全版#1~4』etc.etc...........。
連日、夕方からの雷雨のせいで録画がすべて失敗。
大画面用に録り直しているのがほとんどなんだけど、呆れるほど録れてない。
BS放送が雨に弱いことは解っていたのだけど、CS放送までブロックが飛び交って、途中で受信をやめちゃってる映画も何本か。ヤンなっちゃうね。
で、レンタル作品と録り溜めたモノを見てるんだけど、

★『大いなる陰謀』Lions for Lambs ('07)
監督:ロバート・レッドフォード
監督:ロバート・レッドフォード/メリル・ストリープ/トム・クルーズ

ロバート・レッドフォードが製作と監督を担当した意欲作。
この人の作品にしては珍しく面白くなれないままで終わってしまった。
巨大な国家的陰謀の話で、トム・クルーズは新進政治家だが野心家で、ベテラン政治記者のメリル・ストリープを自分の出世に利用しようとしている。
レッドフォードは大学教授で自分の講義に一回も顔を出さなかった青年に将来性を見つけ、出兵し、危機に直面しているかつての教え子について調査させようとしている。
けれど三大スターの共演が売りなのに三人全員が出会うことはついにない。
しかもメリルとトムは議員の執務室で語り合うだけ。政治家と記者だが丁々発止とやり合うシーンもなく、残念ながら演技的な火花も散らない。
レッドフォードも授業シーンと教授室のシーンで学生と語り合っているだけで、何の見せ場もない。
緊迫したシーンはかつての教え子が戦線で立ち往生し、敵に包囲されているシーンだけ。
この三つの舞台に司令部がレーダーを見ながら焦りまくるシーンのみで映画は構築されていると言っても良い。
これだけで映画を持たせしまっているのだから大したものとも言えるのだけど、主人公三人がほとんど動きもせずに喋っているだけなので、どうしても面白さにまでは到達しない。
メリル・ストリープは車に乗り込むシーンと車内の表情もあるけど、まあ、それだけなのでねえ。

★『バンテージ・ポイント』Vantage Point ('08)
監督:ピート・トラヴィス
監督:デニス・クエイド/マシュー・フォックス/フォレスト・ウイテッカー
   ウィリアム・ハート/シゴーニー・ウイーバー

大統領暗殺に絡む陰謀劇だが、殺害現場を目撃した、あるいは関与した8人の視点から映画は綴られていて、それぞれが最後にある一点に行き着く、という面白い試みをしている。
正直言えば、最初から予想される筋書きそのままに物語は進んでしまったのだが、僕はそれなりに面白く見た。
デニス・クエイドのシークレット・サービスもこれまでの域を出ない設定なんだけど、大統領の警護官はこれくらい頼りになる設定じゃないとダメだ。パターン通りで僕は満足。
警護の相棒マシュー・フォックス。ついに映画に登場だよ。テレビ『LOST』の主役ジャック医師で当てた役者で、漫画にすぐ描けそうな二枚目なのが良い。役どころもなかなか目立っていて、僕はこれにも満足。
フォレスト・ウイテッカーはさすがアカデミー賞俳優で単なるカメラ親父から重要な目撃者、さらに事件を追って駆け回り、デジ・カメ・ムービーを回し続け、少女を助けるヒーローに変貌して行く。アクション映画の中にいても見所満載の役で演ってても面白いだろうなぁ、こういう役。
ウイリアム・ハートは暗殺される大統領。
冒頭で暗殺されてしまうので、仮にもオスカー俳優、そりゃなかろうぜと観客に思わせるところが味噌で、当然、それでは終わらない。
そこに渦巻く陰謀、テロに次ぐテロが短時間に引き起こされて、映画は無謀なほどスリリングな展開になって行く。
この大統領役は彼クラスの役者じゃないと興味を最後までつなげない。つまり、助ける価値があるかどうかの問題でもあるので、ビル・プルマンあたりだと助からなくてもしようがないじゃない? なんて気になってしまいそうだ。
趣向も配役も面白くて僕は気に入った。

★『ゴッド・アンド・モンスター』Gods and Monsters ('98)
監督:ビル・コンドン
監督:イアン・マッケラン/ブレンダン・フレイザー/リン・レッドグレイブ

これは実在の映画監督ジェームズ・ホエールの晩年を描いた作品。
『フランケンシュタインの花嫁』で知られた監督だが、ゲイという性癖がこの人の命取りになったらしい。
それが「性癖」なのか「生き方」なのかは大事かもしれないけどね。
ともあれ、この物語は庭師クレイ・ブーンの逞しい肉体に魅せられたホエールが、彼に絵のモデルを頼むところから始まるのだが、イアン・マッケラン演じるホエールは実在感がある。
マッケラン自身がカミング・アウトしているゲイであるからだが、老醜が漂うようになったゲイの哀しさや、抑え込んでも湧き上がる青年への恋情の表現は名優の名に恥じない見事な演技。
受けて立つブレンダン・フレイザーも『ハムナプトラ』を上地雄輔君に吹き替えられちゃうと可哀想な気がする上手さ。
この人も顔が良すぎて使い道のない口。アドベンチャー物、絵空事映画が似合っちゃうタイプなので、この演技力はちょっと勿体ない。
やり場のないテイストの作品なのだが、庭師の青年がゲイの老人と過ごした日々を優しく思い出すラストに救われる。
メイドのリン・レッドグレイブが監督のすべてを知り抜き、嫌悪しつつも長年仕えている女を的確に演じて極上。
全体に計算の行き届いた非常に良い出来の作品。

★『ドリームズ・カム・トゥルー』Akeelah and the Bee ('06)
監督:ダグ・アッチソン
監督:キキ・パルマー/ローリンス・フィッシュバーン/アンジェラ・バセット

アメリカでは学生のスペリング・コンテストはテレビ中継されるほどの大イベントらしいのだが、日本で言えば公開漢字書き取りテストみたいな物。
中学生が大学生でも知らないような英語のスペルを口頭で答えて行く大会を「スペリング・ビー」と言うようなので、この映画のタイトルは『アキーラとスペリング・コンテスト』。
全く同じ趣向の映画にドキュメンタリーの『未来に架ける子供たち』とリチャード・ギア主演の『綴り字のシーズン』がある。
『未来に…』はこのコンテストの内幕が解るとても面白い作品だが、『綴り字…』は気分が沈む出来。
『ドリームズ・カム・トゥルー』はタイトル通り、「夢は叶う」が根底にある。ただスペル大会に出たがるアキーラに困ったことばかりする母親の存在がちょっと生煮え。
邪魔する根拠がよく判らないのと、突然の変貌にも納得が行かない。
ただ、出場する子供たちの描き方はこれが一番愛らしい。大嘘なんだけど、こういうシビアな話をエンターテインメントに持って行く手段としてはその甘い手、ぬるい描き方が結構大事な時もあるので、僕はまあ、許せる範囲かな?
もっと上手な方法もあるだろうけど。
フィッシュバーンは製作・主演を兼ねていて、かつて『TINA/ティナ』で憎み合ったアンジェラ・バセットをキャストに迎えて今回は解り合う大人を演じていて興味深い。
スペリング大会には人生と地域社会の未来が懸かっていることもよく判って、映画的緊迫感もちゃんとある。

相撲報道で気分がへたっている僕には『ドリームズ・カム・トゥルー』が最も救いだったかもしれないな。

2008年9月4日木曜日

ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンズ

真鍋かをりさんという女性タレントに何も感じたことはなかったが、今日初めて僕の触覚をふるわせるものがあった。
角界大麻疑惑。
この問題が出てきた一昨日以降、僕はみのさんの番組以外のすべてのニュースショー、ワイドショーのコメントに耳をそばだてようとした。
それでも見逃しがいっぱいあるので、断言は出来ないが、僕が見たどの局のニュースキャスターも、どのワイドショーの司会者もそのアシスタントも、そしてこの問題を扱った全番組のどのコメンテーターも言わなかった、でも日本中の視聴者が誰も感じていたひと言を言ったのはただ一人、真鍋かおりさんだった。
そして、その言葉を受けての小倉智昭さんのコメントも真っ当な人の反応だと感じた。

9月4日(木)午前8:00~ のCX系情報ワイド番組『とくダネ!』。
彼女はコメントした。

若の鵬の大麻疑惑が大騒ぎされている時に、一番疑われやすいロシア出身の力士が、わざわざこの時期に大麻吸います?

露鵬、白露山兄弟の大麻疑惑が流れた時、日本中の相撲ファンが感じたのはこれに尽きたんじゃありません? 
だって2~3日前まで吸っていないと出ない反応だというのだもの。
間抜けなのは相撲コメンテーターだ。

弟の白露山は真面目だが、兄の露鵬はキレ易い。

なんだ、ソレ?
二年前、露鵬が千代大海に突き出しで負けた際、勝負がついているのに客席にまで突き落とされたことを怒って露鵬が千代大海にガンを飛ばし、一触即発になった事件が例に上げられた。
それについても僕は以前に書いたが、僕がみのさんの番組を今回見ない理由は二年前のそのニュースで「見てよ、このワルそうな顔」と露鵬の写真を手で叩いたか、指で弾いたことがあるからで、今回、鬼の首を取ったように語るであろうことが容易に想像できたからだ。
ちなみに露鵬の事件は、千代大海との取り組み後、怒り狂って、風呂場のガラスかなんかを割り、険しい形相の彼を撮ろうと支度部屋のドアの前でチャンスを狙っていたカメラマンと記者に暴行を働いたというモノだ。
彼には「出場停止3日」の処分が下された。
だが、相撲ファンは地位が上の千代大海の振る舞いにも厳しかった。
出場停止が解かれた日、客席から期せずして「露鵬コール」が巻き起こり、ソレも大々的に報じられたのだが、みのさんはそれについてはスルーした。

よくあることで僕は驚きもしないが、近年、ニュースもワイドショーも権力と大衆へのおもねりが目立つ。
日本の肩を持つか、外国の肩を持つかの選択に迫られたら、番組出演者たちは迷わず日本の肩を持つ。

「洋画の字幕が読めない若者が多く、吹き替え版が増えている」というニュースがあった。
それに関しては「外国でも吹き替え版の比率の方が増えているんですよ」というコメントが、この頃大勢を占め始めている。
ここでは日本の若者への媚びが売られている訳だ。
ハッキリ言おう。バカに媚びを売ってどうする気だ。テレビは飾り窓の女か!
少し上品に言ってみました。ホントはもっと品の悪い言葉を使いたいが…。サノバビッチ! とか? イヤ、もっと下品な日本語で…。

たとえばアメリカでは多くのメキシカンのためにスパニッシュに吹き替えるのね。
『ウエストサイド物語』のリタ・モレノも声の吹き替え仕事をしてたのよ、
とか、
国民皆教育も日本ほどじゃないでしょ?
字幕を読む能力が最初からないわけだから吹き替えじゃないと映画も見らンないのよ、
とか、
キャスターさんたちにはそんな説明もしておいてやらないといけないんですかねぇ。
日本では一応読み書きの充分な教育がなされているんだから吹き替えのサービスなんて文字からインスピレーションを得られなくなったバカ餓鬼向けでしかあり得ないじゃないの!
「餓鬼」ったってホントに子供ならまだしも、その中心は2~30代の人たちなのよ。
ってこんなこと何度も(ホントに3年くらい前から何度言ったでしょうね)言わせるなよ、って話サ。
でもね、

裁判シーンでの台詞「保釈だ」
お茶の間の反応「何、”保釈”って」

って、現実はこんななんだから吹き替えにしたってそれほどの効果はないと思うよ。
吹き替えを云々する前に基礎学力が足りないんだから、これが読めないなら、お前には映画を見る資格がない、とか、字幕も読めないなんて恥ずかしいことなのよ、不法移民のメキシカンじゃないんだから、って思わせてやらないと、映画芸術そのものが衰退して行くと思うけどね。

まあ、そんな訳で露鵬の肩を持つより、しつこすぎる日本人カメラマンの肩を持つ方が身びいき日本人の大多数の賛意が得られると踏むのは売れっ子の嗅覚だから、テレビに出ている旬の人たちはみんなそうする。
だからみのさんばかりを責めはしないけど、見なくても今回の彼のコメントは読める(つもりだ)。

こういう日本に充満してる空気の中で高見山から始まるハワイ勢は闘い、今また琴欧洲や黒海、露鵬兄弟らヨーロッパ勢は奮闘してる。
マスコミも味方してくれず、琴欧洲が横綱に王手か、なんて「金」の匂いがし始めた時だけ、群がってチヤホヤするのサ。
「身体が大きい」のでなくただ「太っている」だけの日本の中卒の子供たちと彼らは違うので、マスコミのそうした差別感を敏感に察している。
だから、支度部屋の壁を怒りで蹴破るのサ。
もう、いい加減、その辺の事情くらい判ってやれよ。
まあ、判ってても琴欧洲の悪口書く方が記者として楽なのよね、多分。
そういう姑息な理屈の中でスポーツマスコミ(に限らないけど)は小っちゃく小っちゃくなってきたのよネ。

ま、贔屓の引き倒しにしかならないので多くは語らないけど、北の湖さんの言う「すべてはそれぞれの部屋の問題。親方の責任です」はその通りです。
「北の湖」さんが「北の湖親方」となったいきさつなんて涙なくしては語れない。
このかつての大横綱は身体がボロボロになっても現役から引退できなかった。
親方株を貸してしまっていたからだ。
返却を迫れば借りている親方は「廃業」するしかなくなる。
北の湖さんは黙って必死で相撲を取り続けた。
そのことにやっと気づいた彼の親方が奔走して、横綱北の湖に一代年寄の報が届けられたのは引退当日の朝だったという。
悪いけど日本の相撲マスコミはそんなことひと言も報じなかった。
「北の湖引退間近」と気づいて『父ありて』というテレビの企画書まで書いていた僕がそれを知ったのはそれから数年後、作家もりたなるおさんが書いた『北の湖凍る』という相撲小説で、だった。
知ってたら僕は企画書を書かなかったかも知れない。可哀想で。
そんな訳で日本に相撲ジャーナリズムはハナから存在していない。
テレビの中で一億層評論家風に北の湖退陣待望論を語られると僕は涙が止まらない。

相撲は一門制で北の湖さんは相撲界最大派閥の出羽一門にいる。
「大派閥」に救われて土壇場で「一代年寄」の名跡が手に入れられたとも言えるし、だから現在理事長なのだが、苦しみに苦しみ抜いて引退を決意するまで、誰も手を差し伸べなかったのもまた「一門」である。
北の湖さんが頑固に言い張る「部屋の問題」「親方の責任」に彼の相撲界に対する恨みもつらみも、そして感謝まですべてが含まれている。
その小さい範囲に収めておかないと北の湖さんの哀しみ苦しみには果てがなくなる。ただ、広げてしまわないと相撲協会の改革への道は見えてこない。
つまり、北の湖さんには改革は出来ない。
相撲協会の体制や体質が前近代的と言うより「反現代」的なのは北の湖さんの責任じゃない。
旧弊な世界でひたすら努力して、努力すれば結果はついてくると12歳から教えられてひたすら頑張り、それを実現してきた北の湖さんに、この体質は壊せない。
彼は旧弊さを窮屈とも不都合とも感じていないはずだ。だって、彼にしてみれば「努力すれば夢は叶う」ってことなんだし、事実、それを実現してきた人なんだから。
元々凡人でない人に、今、急に凡人になれ、ったってそれは無理だろ、と僕は思うけど、そう言ってる場合じゃないことも僕には判ってる。僕は凡人だから。てことは北の湖さんにこの発想は出来ないんじゃないか、と危惧もしてる、ってことになるんだけど。

北の湖さんは1985年から86年初場所にかけて土俵から降りたくても降りられなかった。
でも今度は実は簡単に投げ出せる状況が整っている。
誰も北の湖さんの理事長続投を願っていないからだ。
でも、北の湖さんはあの時と同じように頑張って頑張って頑張って問題に取り組んでいれば最悪の事態は何とか避けられるのではないかと思っているような気がする。
でも、多分、今度はどうにもならないかも知れない、と僕は悲観的な気分に支配されている。

北の湖セクハラで告発さる。
そんな記事の躍った数年前から僕は相撲界に北の湖理事長失脚を画策するグループが存在するようなイヤな空気をずっと感じている。
単なる憶測。妄想かも知れないけどね。
もしかするとそこには外部の人間も絡んでいると思うんだけど、この頑固一徹などう見ても堅物の理事長にはピンクスキャンダルも似合わなければ、そのご本人の部屋から「師匠の責任」をわざわざ問わせるようなロシア出身力士の大麻疑惑。
悪いけど、あり得ねべサ。陰謀以外にヨ。

そして北の湖さんみずからが「再発防止委員会」とかに言ったという「疑惑が確定しない内に何故、記者会見しちゃったの?」は視聴者の誰もが感じてる疑問だよ。
やくみつるさん。
相撲を揶揄するのはあなたの本職だけど、こういう時は誰もが感じる疑問をあなたも持って、もっとマシなコメントして。
北の湖さんの理事長としての資質を問う前に、理事長の部屋から疑惑の力士が出ているのに、理事長を蚊帳の外に置いたまま記者会見させたあなた方委員会の意図を聞かせて。
今回、あなたも口にしたと思うけど、「相撲協会を揺るがす大問題」は、あくまでも今回に限ってだけど、実はあなた方の手によって増幅された部分もあるんじゃないの?

まあ、若ノ鵬については前々回の『本日の店主』で名前を挙げてないように、力士としてまだ認知していない人だった。
美男なので十両に上がってきた時にすぐに気づいてはいたけど、一応、相撲マニアの僕は美男ってだけでは出世期待リスト、評価定着リストには加えないので。スマンね。

ともあれ「横綱」、特に「北の湖」にリスペクトのない人に何かモノを言って欲しくないんだよ、僕は。こんな言い方に無理があるのは承知だけどね。相撲とブレイク・ルイスに関しては無理を承知で言うことにしてるんで。

何かを作り上げることをせず、壊すことだけに腐心してきたある世代以降は、何でも「一回全部壊しゃイイんだよ」てなことを安直に言うのだけど、その時、壊した後のプランが添えられていれば僕もうなずくのだけどな。

ま、今朝は真鍋かをりさんに拍手、ということで…。