2008年8月3日日曜日

流れ星

漫画家の赤塚不二夫さんが亡くなられた。
僕は72年頃には既に『少年サンデー』や『少年マガジン』を読んでいたのだが、一番好きなのは赤塚不二夫責任編集と銘打った『まんがNo.1』という月刊漫画誌だった。
付録にソノシートがついていて、三上寛『おまわりさん』『ホイ!』山下洋輔トリオ『ペニスゴリラアフリカに現る!』などの他、当時、赤塚さんの懐刀だった長谷邦夫さん作詞による中山千夏『DISCOVER WAR 自衛隊讃歌』カミソリQ子『女番長ロック』井上陽水『桜三月散歩道』の6枚が今も手元に残っている。
つまり、この雑誌は6号で消えた。
赤塚さんは当時、時代の寵児とも言える存在だったが、この月刊誌は何故か毎号250万円の赤字だったという。
陽水のレコードはLPに収録される前の物で一部歌詞が違うという今ではレアものと呼ばれる種類の物である。
カミソリQ子は、多分だが、青山ミチの変名である。

この責任編集本失敗の後に赤塚さんは一時期(おそらく3ヶ月くらい)「山田一郎」という筆名を名乗った。1974年のことだと思う。
これがどういうわけか「かぜ耕士は赤塚不二夫の弟」という噂になった。僕の苗字が「山田」ということからの連想だが『たむたむたいむ』がようやく評判になり始めた頃だ。
そしてどうした加減か僕はその時期に新宿の飲み屋で赤塚さんに偶然お会いした。
その話をしたら、「面白いから放っておけばイイじゃない」と赤塚さんは笑ってくれたのだけど、それからすぐに元の名に戻られたので僕の弟説もいつの間にか消えた。
赤塚さんにはそういう個人的な想い出がある。
ちなみに『天才バカボン』の「パパ」の本名は「バカボンのパパ」である。他に呼び名は見あたらない。
どうでも良いが…「これでイイのだ!」

親しい人が亡くなる。
28日に亡くなったのはテレビに仕事を移した頃、取り立ててくれた演出家の下村善二さん。
下村さんは『ウルトラマン』で知られる実相寺昭雄さんの映画『歌麿 夢と知りせば』などで助監督を務められた。ちなみにWikipedia などでは名前が間違っている。
僕が初めてお目にかかった頃はテレビの旅番組などの演出をされていたが、劇映画演出への情熱は冷めておらず、会ったその日に一冊の雑誌の切り抜きを僕に手渡された。
「脚色して欲しいんだけど」
高橋昌男さん原作の『音無川絵図』だった。
僕の第一稿を読んでの感想は「ポルノにはしたくないんだけどねぇ」だった。
僕もポルノにしたつもりはないのだが、濃厚なラブシーンが数カ所あって、それは原作の大事な要素の一つに思えた。僕はその原作のテイストが今でも大好きなのだが、ともあれ、以後、下村さんはその仕事に必ず僕をキャスティングして下さるようになった。

実は下村さんの実年齢を正確には知らない。
僕より多分、だいぶ先輩のこの方が重用してくれたので、僕にはかなり大手の製作会社のプロデューサーから声がかかるようになった。
本数を増やすもととなったのは以前何度か書いたヤラセのNさんなのだが、のちにレギュラーに結びつく仕事は下村さんの引き立てあってのことだった。

葬儀は斎場の外にまで列が出来て、その人脈が偲べたが僕が個人的に知っている人は5人くらいしかいなかった。
その中のお一人で、かつてかなり密に仕事をした人に挨拶したが、テレビの業界に出入りしなくなって久しかったからなのか、「あ、ドモ」と言われてそのままだった。
多分、僕が誰なのか思い出さなかったと思う。ただ、その時、ふと、テレビから遠ざかって正解だったのだ、と思った。
僕に気づいた人は「かぜさん、痩せちゃったねぇ」と僕の健康を気遣ってくれたが、人相も判別がつかないほど痩せているのだとしたら問題だな。まあ、貧相なジジイになりつつあるのは事実だが…。

そんなこんなで元気の素が足りず、しばらく落ち込んでいた。
ブログも「店主」もサボりがちだが、少し、頑張らないとね。

テレビは今週で『ER』シーズン7と『アメージングレース』シーズン6が終わるんだと思う。
『ER』は落ち着いた展開だが、もはや新味は出難い。レギュラー出演者たちの成り行きが気になるので惰性で見ているだけかも知れない。
今シーズンの『アメージングレース』もエミー賞を貰ったらしいが、今回が一番好きになれなかった。
怒鳴りまくる夫、耐え続ける妻。家庭内のSM関係が垣間見える上、それが共依存関係だとやがてハッキリ判ってくるので見ていて辛く、脱落した時はホッとした。
レースの失敗を相手のせいにし続けてキレまくる恋人たちは今週脱落。
脱落を告げられると同時に男はテレビカメラの前で結婚を申し込み、女はそれを受けたが、さっきまで罵りあっていた二人なので、見ている方はついて行きにくい。
なんか今回は出場者と視聴者との間に微妙なズレが起き続けたシーズンだった。
レースの仕掛けは回を重ねるごとに面白くなっているが、特色のある出場者を、と狙いすぎると今回のようにイヤなカップルばかり、ということになりかねない。
当たってしまってシリーズになった作品が上質なマンネリを続けて行くのはなかなか難しいことなのだなとつくづく思わせる。

『24』は目が離せない。今シーズンは面白すぎて見終えるとグッタリしてしまうほどだ。
『ゴースト 天国からのささやき』は『ミディアム 霊能者アリソン・デュボワ』の二番煎じみたいな趣向だが、光の世界に旅立てず、この世にとどまっている死者たちの切ない思いに毎回号泣してしまう。
こんなに泣かせてくれるシリーズ物も珍しいと思う。といってもまだ2回しか放送されていないので、作り手の方も力が入っている時期の作品かも知れないな。
『アグリーベティ』は漫画チックな展開だが、ゲストに『アメリカン・アイドル』シーズン5の準優勝キャサリン・マクフィーや『プロジェクト・ランウェイ』の進行役ティム・グンが出てきて、僕的にはなかなか止められない。
高校の女探偵『ヴェロニカ・マーズ』は今ひとつ乗り切れていない。
楽しみはサイファイ・チャンネルの『Kyle カイル XY』。現在はまだ超能力少年程度としか解き明かされていない彼の実像に興味津々。
ちょっと見逃せないお気に入り番組になっている。

皆さんも楽しい夏をお過ごし下さいね。

2 件のコメント:

むつらぼし さんのコメント...

陽水の「桜三月散歩道」を初めて聴いたのはかぜさんの放送でした。「ソノシートでお送りします・・」と言っておられました。その時かけたレコードがこの自前のレコードだったのですね。歌い手の名前も『アンドレカンドレ』と紹介してましたっけ。
赤塚不二夫さんの雑誌の付録だったんですか・・。超・レアものですね!

私が未だに「謎」なのは『ひみつのアッコちゃん』のコンパクトの呪文言葉。
「テクマクマヤコン」というのは一体どこから考えた言葉なんだろう・・?
適当に口から出た出鱈目にしては、神秘的で(?)説得力があると思います。
まさに誰にも有無を言わせない魔法の言葉・・
「これでイイのだ!」!!

LIMIT さんのコメント...

かぜさん、こんばんは。
赤塚不二夫さんの訃報には驚かされました。具合が悪くてずっと入院中なのは知ってましたが72歳ですか… まだ若いのに。
小学生の頃、休み時間に黒板にニャロメやケムンパスなどを書いてクラスの中で誰が一番上手か…とか競い合ったっけなぁ!
男性は赤塚不二夫が大好きみたいですね。あの絵柄やギャグ、そして赤塚不二夫その人に魅力を感じてるようです。うちの旦那も大好きで、ショックを受けてます。
かぜさんが赤塚不二夫さんの弟説という話(噂)は初耳です!!誰でしょうね。そんなおもしろい話を作って流した人は…

下村善二さん… 申し訳ないですが存じません。でも、かぜさんの大切な方だったんですね。親しい大切な方を失うと、本当に心が痛み気力も失せてしまうことでしょう。けれども、葬儀の列に見られる人脈の多さにその人となりを改めて知り、良い人と巡り合えたことを感謝して生きていかなくては…ですね。

かぜさん、昔はポッチャリしてたんですか?先日初めてお会いしたのですがそんなに痩せてる風には感じませんでした。
(メタボ体型ではないことは確実です)

暑い日が続いてます。熱中症も危険ですが、クーラーで冷えすぎて風邪ひいたりすることもあるので気をつけましょう。

>むつらぼしさん
『テクマクマヤコン』はわからないけれど『ラミパスラミパス、ルルルルル~』は知ってる!『ラミパス』は「スーパーミラー」の逆さまだったはず。だからって、『テクマクマヤコン』もそうだとは限らないし…
って、Wikipediaで『ひみつのアッコちゃん』検索したら答えが載ってたわよ!!