2013年2月10日日曜日

ゲーム・チェンジ 大統領選を駆け抜けた女

 Game Change(2012 )

Directed by
Jay Roach

Ed Harris
Julianne Moore
Woody Harrelson
Sarah Paulson

2008年のアメリカ大統領選を描いた選挙戦モノの佳作TV映画。
共和党のマケイン上院議員は民主党の新星バラク・オバマの対抗馬として大統領選に出馬。副大統領候補として考えていたリーバーマン上院議員については各方面から反対を受けて断念せざるを得なくなった。
選挙対策本部長のデイヴィスとシュミットは、マケインのリベラル色や女性不人気を補える副大統領候補として、アラスカ州知事サラ・ペイリンを選び出す。
彼女は彼らの期待に応えてお披露目スピーチで全米の話題をさらうのだが……。
エド・ハリスがジョン・マケイン候補を、ジュリアン・ムーアがよく似たサラ・ペイリンを、ペイリンに翻弄させられる選挙参謀をウッディ・ハレルソンが、と過去にアカデミー賞にノミネートされたことのある実力派俳優たちが見事な芝居。
ペイリンに手こずる女性秘書サラ・ポールソンも良い味を出している。

ネガティブ・キャンペーンを嫌うマケインの潔白さと、本来なら味方であるべきペイリンがそのおバカさでマケインの足を引っ張る描写がサスペンスフルな味わいさえ醸し出している。
このバカ州知事さえ相棒に選んでいなかったならマケインはオバマのカリスマ性に対抗できたのだろうか? 
ソレはちょっと謎ではあるけれど…。
大統領選においてわずか 3ポイントでしかないアラバマ州の支持ばかり気にしたり、国際情勢にはまるで疎いくせにテレビ映りばかり気にする元準ミス・アラバマが選挙戦終盤、マケインの支持率の大半は自分が支えているとうぬぼれ、やがてはそれが幻想だったと気づかされ、ヒステリックに騒ぎ立て心を閉ざして行く様が上手く描かれている。
ここまで露わに描かれてペイリンは今後どう生きて行けるのだろうと同情したくもなるが良くも悪くもこれぐらいの自己顕示欲を持たないと政治家は務まらないのだろう。
マケインだけが傷つかずに済んだ一篇。
まあ、マケインは真実はいざ知らず、伝わってきた評価は孤高の潔癖派。この話自体が参謀たちの選挙回顧録なのだろうから、マケインは悪者には描けないわね。
もしかしたらベトナム戦争のヒーロー、マケインをこの TVMを見て好きになった人も多かったかも知れないネ。
日本ではタイミング良くアメリカの選挙戦に合わせての放送でしたが、アメリカでも放送は選挙戦が緊迫の度を増し始める去年の初め頃。
いや、さすが大作ドラマのケーブル局 HBO、上手く出来ていました。

先頃、発表になったゴールデングローブ賞では作品賞を受賞。
俳優陣では苦悩する選挙参謀を演じたウッディ・ハレルソンが主演男優賞候補、サラ・ポールソンはペイリンのあまりにお粗末な答弁を何とかさせるべく、マケイン陣営が彼女の元に送り込んだ秘書の無念を手堅く演じたが助演女優賞候補を惜しくも逃し、ペイリンを実物そっくりに演じ抜いたジュリアン・ムーアが主演女優賞を獲得した。

それにしてもペイリンさん、国政を論ずる場に出て行ける器にはほど遠く、美しすぎた州知事がメディアで評判になって,結果、身の程を知らされる格好になる顛末。
残酷な話なんだけど、何ともスリリングに選挙戦の裏側を描いて、TV映画もここまでやるか、という見応えのある一篇でした。

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