2013年2月3日日曜日

ファミリー・ツリー


The Descendants
(2011)

Directed by
Alexander Payne

George Clooney
Shailene Woodley
Amara Miller
Kaui Hart Hemmings
Beau Bridges
Matthew Lillard
Judy Greer

The Descendantsは「末裔」の意。
ファミリー・ツリーは「家系・系図」なのでまずまずの日本語タイトルか?
良く出来た作品だ。
静かで切ない。
通常なら大声で怒鳴ったりののしったりしがちな物語なのだが誰1人大騒ぎをしない。悲しみをジッとこらえて言葉を飲み込み心に収める。
だが、映画は決して重たく、見るのも憂鬱な家族崩壊の一篇にはしていない。
家族への愛、家系への思い、カメハメハ大王の末裔としての誇り、そして何よりハワイへの慈しみに満ちている。美しい仕上がりだ。
なのに、不思議なおかしみが全編に漂っていて、それこそがハワイ・テイストなのかも知れない。
弁護士マットはハワイ建国の父カメハメハ大王の血を引くおばあちゃんを持っている。
そのために生まれた時から広大な土地持ちだ。
だが、その土地も7年後にはハワイ州に持って行かれることになっており、受託者である内に土地を処分しなければ宝の持ち腐れとなる事態に直面している。
マットはすべての係累、縁者を代表してこの土地で利益を得たいと思っている。
縁者の中にはその金だけが頼りの者もいないではなかったからだ。
だが、その広大な土地を売った途端、ハワイに一挙に荒廃が始まるのは目に見えていたが…。
そんな時、妻のエリザベスがモーターボートの事故で脳死状態に陥る。
仕事人間として生きてきたマットは突然、17歳と10歳の娘の生活に悩まされることになる。
長女は問題盛り、次女は生意気盛りでマットは学校から呼び出しを受ける。
彼らと家族をやり直そうとする過程で、長女の反抗は母の不倫を知った時からであることが判ってくる。
マットは娘二人と長女のボーイフレンドとを連れて不倫相手が休暇を送っているカウアイへと飛ぶ。
マットは不倫相手のスピアを追い詰めても胸ぐらを掴んで激しくなじるようなことはしない。
冷静沈着な、有能な弁護士であることが判る。
彼は毎日を忙しくしすぎて妻を退屈させた結果、彼女が不倫に走ったことに幾分かの負い目を感じていた。
義父はそれを楯にマットを責める。
お前だけが金持ちで、私の娘にボートも買ってやらなかったからこんなことが起きたんだ、と。
がマットは妻が不倫していたことを義父に暴露するようなことはしない。
切ない。
感情を露わにするのはすでに生命維持装置を取り外す段階に入った妻の病室でのことだ。
彼の怒りもつらさももはや届かない妻に向かって、だ。
全編通してBGMはハワイアン。
ダイナーで生演奏されるヨーデルが新鮮だったがこれは本土から来た客がウエスタンを聞かせたって設定のようだ。
この音楽群が切迫した場面でも見る者を深刻な気分に追い込んでしまわないのかも知れない。
娘の恋人シドのワンテンポずれた性格設定も面白い効果になっている。無作法な、でも正義感はある、という…。
マットのラストでの大英断には思わず拍手したくなるほのぼのした味わい深い仕上りだ。

原作者のカウイ・ハート・ヘミングスがジョージ・クルーニー演じるマットの秘書として出演している。
アカデミー脚色賞、ゴールデングローブ主演男優賞の他は割合世界の「小さな」映画祭で主演男優賞、娘役が助演女優賞、そして作品賞など数々受賞。
戴冠の小ささがむしろこの作品に似合っているような気がした。

1 件のコメント:

あくび さんのコメント...

かぜさんのおすすめで、DVD借りてみました。
奥さんが事故に遭って亡くなる
ショッキングで暗いお話なのに、いい見終わりでした。
ハワイ、いいですね。
ジョージ・クルーニーかっこ悪いけど
そこもまたかっこよかった。